リレーとDTLでDラッチをつくる
今回は、リレー と ダイオード と トランジスタ を用いて、Dラッチを作りました。 Dラッチは、"Delay-Latch"の略で、入力を遅延させて出力する回路です。1ビットのデータを記憶することができます。
Dラッチとは
まず、これがDラッチの論理回路図です。
図1.Dラッチの論理回路図
簡単に動作を説明します。
Dラッチは、D入力と、クロック入力の二つの入力端子を持っています。 通常の状態では両方の信号が'0'となっています。 クロック信号が1になると、D入力の値が出力に筒抜けになります。 クロック信号が1から0になった時点でのD入力の値が記憶されます。
D入力が1の状態で、クロックが入力されると、出力も1になります。 D入力が0の状態で、クロックが入力されると、出力も0になります。
クロックが1のままで、D入力の値が変化すると、それも出力に反映されます。 クロックが0になってはじめて、出力が固定されます。
クロックが0の状態で、D入力の値が変化しても、出力の値が変化することはありません。
図1で回路図を示した回路図に、説明を付け加えたものが図2です。
図2.回路の説明
B.記憶部 は、見ての通りそのままRSフリップフロップです。 RSフリップフロップは Set入力 と Reset入力の2入力を持っており、Setを1にすると、文字通り出力が1に変化し、ResetをHにすると出力が0に変化するというものです。通常は、NORゲート2つを互いに接続した回路で構成します。また、TTL(74シリーズ)では、NANDを2つ組み合わせた回路になっています。これは、バイポーラトランジスタ回路の場合、NANDのほうが作りやすいという理由によります。
以下に真理値表を示します。
表1.RS-FFの真理値表
S | R | Q | !Q |
---|---|---|---|
0 | 0 | → | → |
0 | 1 | 0 | 1 |
1 | 0 | 1 | 0 |
1 | 1 | X | X |
矢印は前回の入力を保持するという意味です。
A.入力部 は、D=1 CK=1 のとき 、RS-FFの入力に S=1 R=0が入り、 D=0 CK=1のとき RS-FFの入力に S=0 R=1が入る という回路にになっています。
以下に真理値表を示します。
表2.入力部の真理値表
D | CK | S | R |
---|---|---|---|
0 | 0 | 0 | 0 |
0 | 1 | 0 | 1 |
1 | 0 | 0 | 0 |
1 | 1 | 1 | 0 |
クロックが1となって初めて動作します。 これらの回路を組み合わせることでDラッチが構成されます。
二つの表を組み合わせます。
表3.組み合わせた表
D | CK | S | R | Q | !Q |
---|---|---|---|---|---|
0 | 0 | 0 | 0 | → | → |
0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 |
1 | 0 | 0 | 0 | → | → |
1 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 |
これが、Dラッチの真理値表になります。
入力に対しての最終的な出力さえわかれば問題ないので、SとRの部分は省略してしまいます。
省略して、最終的に完成する表が、以下のようになります。
表4.組み合わせ、省略した表
D | CK | Q | !Q |
---|---|---|---|
0 | 0 | → | → |
0 | 1 | 0 | 1 |
1 | 0 | → | → |
1 | 1 | 1 | 0 |
表を見てみると、しっかりとDラッチの動作を行うことが確認できると思います。
回路に起こす
通常このような回路は74HCシリーズなどのゲートICを使って構成します。 ICならば、単に電源を加えて、順番に繋いでいけば特に考えることもなく完成します。
しかし、それでは面白くありません。そのため今回は、リレー と ダイオード と トランジスタ を使って論理回路を作成します。
AND OR NOT は下図のように、ダイオードとNPNトランジスタで構成することができます。
図3.AND OR NOT
ダイオードとトランジスタで構成されている論理回路を「DTL(ダイオード・トランジスタ・ロジック)」といいます。40年ほど前までこれが主流でした。簡単な回路で構成できますが、消費電力が大きく速度も遅いため、廃れてしまい、現在ではほとんど使われていません。 現在では、74HCシリーズなどに代表される、MOS-FETで構成されたCMOSと呼ばれるICが主流となっています。
B.記憶部(RS-FF)はリレーで構成します。 こんな回路になります。 NORを二つ組み合わせた形です。NORはリレー2個で実現できるので、RS-FFはリレー4つで構成します。多回路リレーであれば、もっと少ないリレーで実現できるかもしれません。
図4.リレー式RS-FF
以上の二種類の回路を組み合わせます。
こんな感じになりました。
図5.リレー+DTL式Dラッチ
実際に組む
この回路をブレッドボード上に構成してみます。
図6.ブレッドボード上に組みました。
とりあえず、実際にDラッチ的な動作を行うことが確認できたので、よしとします。
動画にしてみました。 ちゃんと、Dラッチらしく動きます youtu.be