リレーとDTLでDラッチをつくる

今回は、リレー と ダイオードトランジスタ を用いて、Dラッチを作りました。 Dラッチは、"Delay-Latch"の略で、入力を遅延させて出力する回路です。1ビットのデータを記憶することができます。

Dラッチとは

まず、これがDラッチの論理回路図です。

f:id:naitsuku:20150524112121p:plain 図1.Dラッチの論理回路

簡単に動作を説明します。

Dラッチは、D入力と、クロック入力の二つの入力端子を持っています。 通常の状態では両方の信号が'0'となっています。 クロック信号が1になると、D入力の値が出力に筒抜けになります。 クロック信号が1から0になった時点でのD入力の値が記憶されます。

D入力が1の状態で、クロックが入力されると、出力も1になります。 D入力が0の状態で、クロックが入力されると、出力も0になります。

クロックが1のままで、D入力の値が変化すると、それも出力に反映されます。 クロックが0になってはじめて、出力が固定されます。

クロックが0の状態で、D入力の値が変化しても、出力の値が変化することはありません。

図1で回路図を示した回路図に、説明を付け加えたものが図2です。

f:id:naitsuku:20150524114211p:plain 図2.回路の説明

B.記憶部 は、見ての通りそのままRSフリップフロップです。 RSフリップフロップは Set入力 と Reset入力の2入力を持っており、Setを1にすると、文字通り出力が1に変化し、ResetをHにすると出力が0に変化するというものです。通常は、NORゲート2つを互いに接続した回路で構成します。また、TTL(74シリーズ)では、NANDを2つ組み合わせた回路になっています。これは、バイポーラトランジスタ回路の場合、NANDのほうが作りやすいという理由によります。

以下に真理値表を示します。

表1.RS-FFの真理値表

S R Q !Q
0 0
0 1 0 1
1 0 1 0
1 1 X X

矢印は前回の入力を保持するという意味です。

A.入力部 は、D=1 CK=1 のとき 、RS-FFの入力に S=1 R=0が入り、 D=0 CK=1のとき RS-FFの入力に S=0 R=1が入る という回路にになっています。

以下に真理値表を示します。

表2.入力部の真理値表

D CK S R
0 0 0 0
0 1 0 1
1 0 0 0
1 1 1 0

クロックが1となって初めて動作します。 これらの回路を組み合わせることでDラッチが構成されます。

二つの表を組み合わせます。

表3.組み合わせた表

D CK S R Q !Q
0 0 0 0
0 1 0 1 0 1
1 0 0 0
1 1 1 0 1 0

これが、Dラッチの真理値表になります。

入力に対しての最終的な出力さえわかれば問題ないので、SとRの部分は省略してしまいます。

省略して、最終的に完成する表が、以下のようになります。

表4.組み合わせ、省略した表

D CK Q !Q
0 0
0 1 0 1
1 0
1 1 1 0

表を見てみると、しっかりとDラッチの動作を行うことが確認できると思います。

回路に起こす

通常このような回路は74HCシリーズなどのゲートICを使って構成します。 ICならば、単に電源を加えて、順番に繋いでいけば特に考えることもなく完成します。

しかし、それでは面白くありません。そのため今回は、リレー と ダイオードトランジスタ を使って論理回路を作成します。

A.入力部 は、ダイオードトランジスタで構成します。

AND OR NOT は下図のように、ダイオードとNPNトランジスタで構成することができます。

f:id:naitsuku:20150524163819p:plain 図3.AND OR NOT

ダイオードトランジスタで構成されている論理回路を「DTL(ダイオードトランジスタ・ロジック)」といいます。40年ほど前までこれが主流でした。簡単な回路で構成できますが、消費電力が大きく速度も遅いため、廃れてしまい、現在ではほとんど使われていません。 現在では、74HCシリーズなどに代表される、MOS-FETで構成されたCMOSと呼ばれるICが主流となっています。

B.記憶部(RS-FF)はリレーで構成します。 こんな回路になります。 NORを二つ組み合わせた形です。NORはリレー2個で実現できるので、RS-FFはリレー4つで構成します。多回路リレーであれば、もっと少ないリレーで実現できるかもしれません。

f:id:naitsuku:20150524163302p:plain 図4.リレー式RS-FF

以上の二種類の回路を組み合わせます。

こんな感じになりました。

f:id:naitsuku:20150524163607p:plain

図5.リレー+DTL式Dラッチ

実際に組む

この回路をブレッドボード上に構成してみます。

f:id:naitsuku:20150524164849j:plain 図6.ブレッドボード上に組みました。

とりあえず、実際にDラッチ的な動作を行うことが確認できたので、よしとします。

動画にしてみました。 ちゃんと、Dラッチらしく動きます youtu.be